[秘密 其ノ一]

それらは概ね はねつきあたまのあの子の帰りを待つ わたくしどもが
デタラメに吹く口笛を薄くのばして作った風車でありますゆえ
まぁ 「虚飾は何とか」とでも申しますか
くるくるくるくるくるくるくるくるくるくる
廻る風車
あーっ!また帰ってきた!!
『おかえりなさい』

[秘密 其ノニ]

尾のない赤い目をした子犬が彼に問う
(そうそう これも『お月さまが照らしてくれた秘密』なのですが)
「それは羽かしらん?」と
ほうき星に導かれてここまで来たんだと
くぅるり まわる 風車は折れた


[アノ子何処ノ子]

人肌恋しい 恐れのお山で僕は産声をあげました
カタカタ 風と風車 調律はお好みで
母様は音の無い人で 泣けども 泣けども
爪かじり 飛び回っていた
『帰依』だとおっしゃっていた

「残月にお祈り」
「寄らば大樹の陰だね!」

「そう(笑) 誰よりもずっと 優しくされたいのでしょう?」

ラ〜ララ〜と貴方は言う 舌を回しながら
千の目が恐くて
泣きながら月にお祈りした

〜青より白濁 白より蒼い天上の月光を以って初めて
鮮明に浮かび上がる千の羽を頭に縫い付けた結果〜

地よりも低い空へと昇り のぼり ま す!ませんか!ましょう!

『君が』

「綺麗ナー」と 母は見てくれた
ひらひら ひらひら 千枚羽
相も変わらず唄を歌う でも音がないね 母様
震える銀の波
祈り・願いの代償=ズルリと頭から伸びていく
母は笑っていた
『月へと伸びていく母を追いかけて泣き叫ぶ僕のうしろで
はねは静かに ただ静かに ゆれていた』

ああ 風車はからんからんと音を立てて流れていく
流れていく
微笑みだけを残して

赤い空の窓に消えていく母を呼ぶ
唄を歌った 咽がかれるほど

幼き歌声をのせた 月の雫は
降り注ぐ光のおびに溶けて星になる

つよく ねぇ そう高く背伸びしたよ お月さま
空へと落ちていく


『あっあっ!また帰ってきたー!!』


もし きみきみ はねははえました?



坂を登り 開く広々と
穂波が揺れて 猶予ぅ
金色の押し黙る

人が影 置き去りに 手招く
遮った川は深く
水分りの指先抜け

溶ける

夢からさめて 並み居る川門
ひとつ選び 扉めくると 砂に崩れた

七彩光り 枯れ木に刺さり燃えた
彷徨う水鶏 群になり豈に飛ぶ
辿り着いた 影は瞬く光りを抱く

漣は稲穂 背押されて森に消えた
彼方に光 見え隠れ
暗闇で探す足跡 照らすものに集う
小さく求めあい

潦 歪んでは細濁り
絶え間無く

ああ 今さら 昇る光見て胸を裂く
小さな影と 背負うもの 噤み行く

歪み裂ける虹と 隠沼落ちた夢と 冷光

掠めて遠く!

ひらひらと光重なって架け橋になる
流れ深き森避けて
水に影短くして在る それぞれの夜明けを待つ
ひとつ増え ひとつ消え

誰が為に行き 誰が為に渡す重きか
七彩に問う 身を焦がす
橋を渡る人々に叫ぶが返答無く
手招きして溶けた

坂を登る その先に
穂波が光ってる
今も 変わらず 今も

増えて 消えて 光っている

幸せを謳う詩

流れていく弔いの灯は風を凪ぎ空へ
水上から流す 幸せを 小さな貴方と

--------------------------------
 カタカタ 動き始める映写機 カタカタ
--------------------------------

貴方がたてた
赤色の鯉のぼり 静かに空を泳ぐ
夕波に交錯してあきつが並ぶ

穏やかに流れていく波の音 遠く
深き終の瀞
涙霞 途切れぬ糸

外灯に群がる霧雨は無始礦劫
水面に乗せて ひとひら ふたひら
わたし あなた わたし あなた
流れていく散華

あの人が好きだったぼんぼりに
赤い灯をともしつづけお化粧をする
笑いかたも忘れた

待てども待てども帰るはずのない貴方を待つ私は
ひとり ひとり
-------------------------------------
カタカタ カタカタ
 ごらんあれ!歓楽だ!愉快な至楽キネマ!
少女「はやく!はやく!」
 爺様が貴様に見せてやる
少女「はやく!はーやーくー!見せてー!」
 座り聞け!幸せな女の眩きを!
カタカタ カタカタ

 幸せを謳え
-------------------------------------

静かに舞う 緋色の糸

外灯に群がり連なる影は無始礦劫
二人の傍らで転ぶ
「いつまでも続くといいな」
彼女は言う
絶え間なき 煌々

二人で灯した光は赤く
肝胆 相照らし寄り添う影映す

無言の会釈 揺れる

小暗がりでも歩くことが出来た 二人で灯せば
静かに 歪み心任せに吹く

静かに

木漏れ日遊ぶ
枕辺染め 身溶かす
葉擦れが吹き消した 吐息の音
折り鶴は木の葉 風に揺れ 傾く
訪いた 影を延ばしながら

------------------------------
 ふぃるむ は逆さに周り
 二つの笑みを白黒にして 燃やす
------------------------------

飛び散る灰は 粘土のように固まり
後ろに伸びた影に散り敷く

「幸せになるために」

描く夢は 淵にまわり溶けて消えた
送り火揺れて ささめきあう

静かに

木漏れ日揺れて 波を作り 身運ぶ
手を握り返してくれませんか
幸せな顔で寝ているものだから
波に乗せた言葉がぽろり

ああ ひとつだけ灯す明かりは瞼に揺れ
冷たく黙に冴ゆ 歪みながら

どこまでも続く大路 埋めた木の葉
歩く音に合わせて軋んだ胸

埋めた日々を具に見つめて消えた
「幸せの終わりに小さな花が咲いていたとして
私にとってそれが この子 でした」

「二度とは会えぬと思った貴方のぬくもりは
私の中で ああ 生きていました」
空を舞う鯉のぼりは歪んでいる

側に座る白髪の少女が笑む

カタカタ カタカタ カタカタ

この子の七つのお祝いに

子守唄
「この子の稚き ててが握る紅差し指は禍福よ」

貴方の遺愛のぼんぼり粛然と
灯点して暗夜に濡つ
私と子と交錯する雨音に心願
「散華に散り敷く涙も枯れた」

あれから幾年 貴方が残したちぃさぃ幸せ
髪締め乍ら 夜な夜なこの子の為にと
子守の唄を 口遊み 徘徊る四肢

臥所の灯りに ゆらゆら寂寞
天井踊って 眼下に破れ
飛び散る手足が頭についたり
炯々 いひひ と耳奥舐める

毎朝毎晩 舌掻きむしって 騒擾

反り返る

もういいかい もういいかい と笑む
稚拙な吐息で炙られても
この子のために

後ろの正面だあれ

白黒キネマの廃工場から流れる煙がこの子を包む
右手 左手 足 首 心音
蛇口に隠れた少女が飛び出し小さなこの子の姿に閃光
少しずつ食む

この 笑みも 心の埋み火 一切 誰にもやらぬ!
貴方が残した小さな幸せ守るために 白鶴
「溢れる汚水片身を浮かせて!恥ずべき奴だ!」
ゲラゲラ讃える狐の団居に背を向け
唇噛みちぎり ぼんぼり抱えて慟哭

ああ 静かに流れる音が
こだまして九十九祈りなす
小さな貴方の手を引き 生きていく
ひらひら 椿の散華
同じ重さの掌にそっと頬よせ
火を灯す

言祝きとした 白雨 消え入る

白黒キネマの廃工場から流れる煙が眩き昇る
金切り声あげ大路に集まり跋扈に散乱 縺れて不揃い
刻々次第に影絵となりて
化粧いた眼球親子に向ける
奥歯をならしてしたたる夫婦が
咫尺て息吹く

懐手して足踏みする翁が
手遊びしてる媼に耳打ちしている

狐「ほらほら はやく 息 とめなくちゃあ!
背中にしがみついて 首刈るぞ」

点鬼簿くわえた白髪少女が神木登って爪立ち絶叫
咽び この子を 抱き締めた
狐の堵列は這いずり回って裂帛為い為いこの子を掴んだ
嗚咽
「嗚呼 この子だけはなくさぬように」

助けて!

女「耳 鼻 目 口 髪の毛一本 誰にもやらぬ!」
狐「おまえが望んだ幸せ ひとつも ひとつも 叶わぬ」
髪の毛むしって嗚咽
少女はもんどりうって笑う
老夫婦「隠してしまえよ この子が七つになるまで」

女「ああああ貴方!鯉のぼりが空に昇って行くまで!お願い!」

「この子に幸せの風が吹きますように」

ああ 貴方の足跡灯し歩く小さな背中を見て祈った
この子の七つのお祝いに 小さな折鶴ひとつ 水上から流す
幸せ込めて 貴方は風に舞う

明らむ差し込む光の尾が笑む
貴方の遺愛の灯りを消し去り
大路を掠めて悠然と舞い
神の木連なる閑居に消えた
狐の堵列は歪にくねって右顧左眄 互いに食い合う
時折八ノ字に笑みながら

おやすみよ すやすやと かわいいこ
あなたは 目を閉じて
ただすやすやと おねむりなさい

崩れた積み木の下で抱く狐色の子
逃げていく

神木から落つ 少女の頬たたれて泡吹き 金切り笑う
浅黄に染まった男と女は利休鼠の眼球こすって痙攣
劈く音して一瞥 先には
双眸を縫ったお狐様の行列が 股開く

もういいかい
まあだだよ
もういいかい
もういいよ

首転がる

「ああ この子が大きくなれば あなたと過ごした日々がまた」
瞳は刻んだ硝子の回想
空を泳ぐ鯉のぼりだけは知っていた

あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・
あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あ・あー

あ!

この子  よく  見たら  あ!あ!あ!あ!

お人形

予後の音

跫音のとまる背に 面影ばかり
重さに下り 窓明かり 欠ける

はじめより穏やかで 手合わせ 友ささめく
最後まで残るほうが 影厭う

目つむれば やにわに 残る

斜になる
沢山の部屋が在るが 遠く佇む

結びの目 駆け足で 解かれていく
思い思い

頽れた瑞恵の跡
小止みなく増える

跫音のとまる瀬で
友が手を振る
笑顔で

月光蝶

「あの高さはどれほどでしょう?」 と貴方は言っていた

幼いころ お月さまの下でキラキラの満ち欠け辿って遊んだ

遣らずの片時雨
紫陽花と琥珀色した月は汀で踊る
それぞれを讃えながら

一つ棘に触れるたび 消えていく
ひとつもこぼさぬよう
てのひらですくってためた 月はなくなっていた

さよなら 白面に照らされた
指先にとまる 番の蝶
キラキラと光る雪は
貴方のような気がして

息が出来なくなった

指に絡む蜘蛛の糸
私 私の顔が無い

のぼっていく 消えていく しゃぼん玉
壊さぬように

大切に大切にしていたのに

私はここにいるよ ねぇ 神様
湖面の波紋にのり ゆれながら

綺麗に飾った蝶はガラス玉
いつからだろう
何も無い私
蝶が飛べたのは
いつもいつも 貴方がいてくれたから

さよなら 物言わぬ者たちよ
きっとずっとそうなのでしょう
キラキラと光る 月は ああ 雪色の蝶に溶け 涙になった

赤い鈴

夕暮れ 遠くに伸びる 長い二人の影を目で追いながら
手を繋いで帰った
鳴る小さな 小さな 鈴の音
一様に並んでいる鳩時計と一緒に鳴るよ
りんりりぃん
響く小さな小さな音

ある朝 彼はお偉いさん

「君は僕がいなくても平気ですか?」

震えてるその手から漏れている 堂々巡りの迷妄
とても汚い色した 吐き気を催す丹の笑み
りんりりぃん
響く彼女の鈴の音

白装束の老婆が背中で笑う
  そうさ ペロリと 舌出しながら
「右手は空へ 左手は海へ捨て
 立派に蒼天仰げよ!」
と論う鴉たちは右へならえ

至極是当然と並べ立てた理想と幸せは雨催い
茫漠と広がり解ける
耳元で囁く
「鬼さんこちら 手の鳴る方へ」
白雲消えてゆく

「嘘をつくキサマらの舌なんてチョン切って捨ててやる!
 ずっと待つんだ!彼を待つんだ!」
見えぬ聞こえぬ
「何も無い方がいい」と笑う
金魚鉢に写る彼女はくるくる流れる

「お元気ですか?」
彼女の手紙 ある日を境に途絶えた

何度目かの緑雨に染まる鳥が風を連れてきた
でもいない あの子は黙して音色
あの飴色空 影を延ばすことは無いでしょう
鈴は鳴り響く

「僕は帰ってきたよ!」
鴉の喚声 暮色に消ゆ
彼は走った!そして涙こらえて そっと扉開けた!
そこには 彼女の時をのせた 鈴の音だけが



指さした先の上枝に明かり 頬を撫でる
ささめく きらら
おもいで こころ通せんぼ
揺れた 景の秀

鴇色に染まる 小さな頬
ぽけっとの中で結ぶ 愛しさ
吐息 牡丹雪と昇る相思
胸に積もっていく心 きらら

時代に流るる深雪の密める比翼の芽
寄り添う波 薄氷の下
水鏡映す月 たゆたえて細泳ぐ
星の船 背に乗せながら

絆を思う日あればそれでよくて
妙に雪澄めたことも 言の葉に募った
下枝の影で

「そうね」
と紅涙に浮く静寂
ぽろり ぽろり と泣き虫屋さん
「山紫水明だ」
と目深帽子
ねえ ここがいいね
垂れ 声あげた

降り続く雪を指に託して流した
小舟浮かぶ 小夜の波間に
抱き締めた迷子 遙かより近くに頷き
はじめて泣いた 強がり屋さんが

幸せを数えたら 指が足りなくなった
寄せ合わせた頬の隙間を埋める迷い星

湖べりであそぶ綺羅星

小さくなる光の点滅に触れ
瞬く度に映る二人の影 妙により澄める

星が回る
飛んでいく影帽子 光飛沫に消ゆ

波紋に月踊り 舟昇る
糠星の川を
静かに揺れて
水脈は尖りなき朧

薄氷に鏤めて光る星がささめいて
二人の影を消していく

時代に流るる深雪の密める比翼の芽
摘んだのは 剥落の名残
幸せの意味と水清き
去る風花抱き 思う

「あなたに会えてよかった」と

神曲

−あるものは−

日と月と並び 峨々たる嶺
嫁いでいく 身は華燭に焼ける

やがて四方の景 触れた頭垂れて
飲んだ 蚯蚓踊る酒を

−あるものは−

腸を舐め転ばす
「産声!」
坊主は相好崩し貧る
火柱もろとも腐って
「化仏よ!」
住人は六道

小坊主 「あろうことか!あろうことか!」

百も千も過ぎし頃
瑞光の遍し大運河に
背骨忘れて くるわ魚が
びっちゃら!びっちゃら!
暁光吐き 白道まで

泳ぐ!

腫れ上がる我のここり裂きて
抉り出した 坊主を呪い 這う

馬 「まあ!これいかにも!ただならぬ!あすこに!行きたまえ!」

唇すぼみてほざいて馬
髪掴まれ 木の葉になり舞う
魚挙り喰い!

咳き上ぐ美女 ただつくづく
乳飲みしている白衣(童のように)は呻き
煩悩の犬となりて 切っ先を向ける

這う娘は 二つの河より覗いている
白目の歯黒(子に乳飲みさす)に足掴まれ
引きずり込まれた

歯黒 「ごゆるりと」

揺ららと鳴る仏花紙の雲は極彩色よ
在す神の祝

霊香湿る
「わたくし 禍言を」
野辺の送りに
「謳うわ」

恨み 恨み 恨まれ

神国に飛び込みたる逆罰
浅浅と舞う

彼 「いかがなものか!」

雷で噛み千切る!

百八の笛を ぴるる ぴいるるる
六根 六塵 三世
響き出でたる 鐘

わたくしの唇 震る振りて神体
ふりふり ふりふり ふりふり

あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

一度落ちた魚は苦輪
輪廻して止まぬ恨みの目
その背の鰭に突き刺し運河上る
禍言を叫び 喰い転めきて

咳き上ぐ者 ただつくづく 神拝している

彼 「やや!そこに在り!」

背中を炙る 紅蓮の炎にも気付かずに

呪いの唄 口ずさみて
女は びっちゃら びっちゃら と泳ぐ
白き道 続々と

綴る 地の獄 是より

天道 彩裂き 照らす
光に導かれ辿り着いた地ですら苦輪の海
迷い子は紅蓮に焼かれるも 泳ぐ
偽りの瑞光を信じながら

小坊主 「我は思う!
世に一切の衆生が無くなるまで人は!
憎しみの海 泳いでいくのであろう!」

空澄みの鵯と

水霜に濡れた星に手をそえて
隣で眠るあなたの指に光を繋ぐ

豁然とある景色はさ揺らぎに
凍みる指に息吐くことさえ 溜息と紛う

指の先あやす 二羽の鳥の仲睦まじきよ
定まらぬ遠くを見て 滔々と揺れた

「ねえ 見て 手を握り返してくれるの」
嬉しそうに笑う あなたの手は
あえかなる波の花に散り行く 班の雪

雀色時になって 迎えにいく蘖抱いて
すれ違う日々は木立に透ける

あと少し もう少しだけでいいですから と願う
蒼見えぬ木下闇 羽ばたく強さを

風の道抜けて 白目の二つに手を差しのべ 彼方
明かり瞬きてはじめて 人は笑い
幸せの意味に気付く

林立の光の木々
かき分けて見つけたものが
舞いきて擦れ違う

広がっていく白 畳なわる羽が
吾子の声と昇る 静々
ただ手を握り 問わず語り
彩なす莞爾に花舞う

虚空の深い吐息にかき消されていく
篠突く雨去りし後
麗ら仰き 人は知る
幸せの在り方を

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